文字の上だけで「半減期」を実感することはなかなかできません。
放射性気体ラドン220(220Rn)が、ポロニウム、鉛と崩壊する過程を観察し、半減期を理解しましょう。
モナザイト(モナズ石)から出る放射性ガス(ラドン)を霧箱に注入すると、α線による非常に多くのV字型の飛跡を観察することができます。これらの飛跡は徐々に減少し、数分後にほとんど消えてしまいます。この理由は半減期から説明できます。
ラドンにはウラン系列とトリウム系列の二つの崩壊系列があります。
ウラン系列 238U →・・・→ 222Rn → 218Po → 214Pb → 214Bi
(半減期 3.82日) (半減期 3.10分)
トリウム系列 232Th →・・・→ 220Rn → 216Po → 212Pb → 212Bi
(半減期55.6秒) (半減期0.145秒)
このうち霧箱に注入されたガスはトリウム系列のラドンです。
この結果、飛跡がV字型に見えるのは216Poから212Pbへの半減期が0.145秒と短いため、220Rnから出るα線とほとんど同時に出たように見えるためであり、数分後に消えてしまうのは220Rnから216Poへの半減期が55.6秒(およそ1分間)であるためです。